福建料理の伝統的な高級スープ「仏跳牆(ファッティウチョン)」を食べに、MRTを乗り継いで天母エリアの料理店「金蓬菜」へ。
ここは蜂のさなぎ揚げやキジバト編で紹介した「塗姆埔里小吃」からほど近い場所にある店で、このあたりのエリアは駐在員が多く滞在していることで知られている。まあ、自分のようなバックパッカーに毛が生えたような旅行者にはあまり縁のなさそうな高級エリアです。そういう土地柄のためか、日本人観光客や駐在員を狙った高級料理店が比較的多く、往来を歩いているとけっこう日本人らしきオバサマ方やファミリーなどをよく見かける。街も綺麗で、自分が宿泊していた学生寮を思わせるような小汚いゲストハウスがある界隈とは趣が大きく異なり、屋台や食堂なんかはほとんど見かけない。東京でいうと青山とか西麻布とか、どちらかというとそっちにノリが近い感じである。そう意味では異文化に触れたい旅行者にとってはやや面白味に欠けるが、前述の通り(比較的)ゴージャスな高級料理店もいろいろあるので、いつも夜市の屋台ばかりで「たまにはイイトコで食事がしたい」と思った時なんかに重宝するかもしれない。
「仏跳牆」という名前は、あまりの美味しそうな香りに日々厳粛な修行に勤しんでいる坊さんですら塀を飛び越えて食べに来る、という設定から来ているのだとか。実際にそんなスットコドッコイがいたかどうかはともかく、このストーリーは観光業界ではすっかり定着している「必須ネタ」のひとつのようで、ガイドブックやら観光案内サイトやらをあたると必ず「ぶっとびスープ」というなんともダサい通称とセットで出てくる。日本でもあの「美味しんぼ」で(かなり初期だが)取り上げられており、偏屈極まりない大金持ちの社長さんが「外食しない」というよく分からない戒め(だかなんだか)を香りを嗅いだだけで思わず破ってしまう、というストーリーで紹介されているので知っている人も多いはず。ニース風ステーキやらスッポンの醤油煮やらといった魅惑的な料理にも頑なに箸をつけようとしなかった人が香りを嗅いだだけで思わず飲んじゃうスープっていったいどんなだよ、という感じですが、まあ確かに食欲を刺激するいい香りではありました。
手前の茶碗と比較するとボリュームが際立つ。これで(小) |
料理法は、大きな陶器の壺に、水と一緒に乾物を中心に様々な食材をガンガン投入して長時間蒸したらはい出来上がり、というもののようで、高級料理にしては意外と単純。ただ、かけるコストによってかなり内容が変わるらしく、参考までに漫画の例を挙げると、干し貝柱、干しアワビ、魚の浮き袋、フカヒレ、朝鮮人参、金華ハムなどの高級食材をガンガン入れていた。とはいえ当然お店が普段提供するぶんではそんなことがあろうはずもなく、通常はあらかじめ内容が設定されているものを注文する。こちらのお店で使っていた食材を思いつくままに挙げると、排骨、ナマコ、白菜、芋、魚の皮、貝柱、しいたけ、栗、ナツメ、クワイ、杏、えのき茸など。排骨がかなりの量を占めているのが特徴で、一回取り皿に盛るとかなりの確率で排骨が3〜4片入る。排骨ばかりそんなに食べていると当然飽きてくるので、途中からは排骨を避けて食べるようになります。
味はコッテリとした醤油味で、排骨に由来するものか甘みも結構強い。意外にも漢方臭さはあまりないが、やはり排骨が難物で、排骨から染み出す油分が途中から少々辛く感じるようになる。要するにほとんど排骨との戦いである。おまけに量が半端ではなく、(小)を頼んでも余裕で5〜6人分の胃袋を満たすことができるほど。大人2人で食べたのだが他にも数皿頼んでいたこともあり、とても食べきれずリタイア。折り詰めにしてもらって持ち帰りました。ちなみに、お店側もこの手の客にはすっかり「慣れっこ」のようで、中国語がろくすっぽ喋れなくても壺を指さすだけですぐに折り詰めを作ってくれた。たぶんほとんどの旅行者がその恐るべきボリュームの前に膝を屈しているのだろう。もし食べてみたい、と思った方がいたら、4人以上での注文をお勧めします。
高級感を醸しだしている店構え。店内では大型テレビでよく分からない紹介映像が流れている |
難易度:★☆☆☆☆
味 :★★★☆☆
お値段:700元(小)